さらさらと ゆく/葉月 祐
 
年に一度きりの花火は
雨上がりの夜空に咲いた

濡れた地面から漂い始めた
靄に包まれながら
どん どん どどん
光鮮やかな花が 次々と咲いては 散る

無数の色に輝き 夜を照らす
閃光の群れを眺めていた
今年も綺麗だな と
思っていたけれど

少しして

強まった風に乗って
ここから遠く離れた花火の打ち上げ場所から
役目を終えた火薬の匂いが届いた
目を閉じれば
それはより鮮明なものになり

その煙は
重たい夜空の中を泳ぐ様に流れていて
途中から 花火よりも
煙の流れる様子を眺めていた

僕はただ見とれていた
少し横では
花火がまだ打ち上げられ
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