推定無題/ただのみきや
 
ものごとを特別にするのは人の心だ
ある日を他の日と区別するのも
季節と年月
朝と夜
何処から来て何処へ往くのか定かではない
時の流れは顔も姿も見分けられないが
確実に摩耗させ消し去ることを知っているから
繰り返し循環する巡りの中へ魂を放流させる
ホンダワラに寄り添う小魚のように
互いに漂流物でしかない
国家も民族も思想も宗教も
個人より少し大きいだけの漂流物にすぎない
記録は残り
記憶は消える
想像力は個人を救いまた破壊をもする
共感は他者を救いまた殺しもする
死は人に忌み嫌われる万人への恩寵
忘却は死の生前分与
この日はわたしにとって記録であり
記憶ではない
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