チラシの裏のはなし/山人
 
男が集まり始めた
たがいに声を発するでもなく、視線すらも合わせることがない
かといって不自然さもなく、それぞれが他の存在を意識していないのだ
巨大な月のまわりをひしめく星たちは、その峰に向けて光を輝かせている
アーー
オーー
ムーー
と、一人の大男が唱え始めると、つられてそれぞれが声を発する
歌でもなく、呪文のようでもなく
静かな大地のうねりのように重低音が峰から生まれ出る
ちかちかと光る星々から閃光が走り出す
男たちの呻く重低音が峰を下り、四方八方に鋭くさがりはじめ
やがて山岳の裾野を伝い人家のある街々まで光とともに覆っていった



戻る   Point(3)