岩肌に咲いたハート/藤鈴呼
桃色の薔薇が咲いた
可憐な少女のようだと目を細めていると
ワタクシはサザンカだ、などと言う
クールな目元は
棘の或る馨しさ そのものなのに
否 と 応えるから 不思議だ
大雪を過ぎ
世の中は 漸く冷え込んで来た
「ほんに しばれる朝だなや〜」
両手を擦り合わせる姿も
もう 珍しくはない
岩の上に咲いた ハート型の花びら
ふわりと舞い上がる風で
まるで なかったかのように
消え失せるから
ほんの 一瞬の恋だね なんて
雪が葉に咲く 一瞬と おんなじ
春かと勘違いした枝が
幾重にも伸びて 太陽を目指す
お前の季節は まだ先だ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)