岩肌に咲いたハート/藤鈴呼
 


桃色の薔薇が咲いた
可憐な少女のようだと目を細めていると
ワタクシはサザンカだ、などと言う

クールな目元は 
棘の或る馨しさ そのものなのに
否 と 応えるから 不思議だ

大雪を過ぎ
世の中は 漸く冷え込んで来た

「ほんに しばれる朝だなや〜」
両手を擦り合わせる姿も
もう 珍しくはない

岩の上に咲いた ハート型の花びら
ふわりと舞い上がる風で
まるで なかったかのように 
消え失せるから

ほんの 一瞬の恋だね なんて
雪が葉に咲く 一瞬と おんなじ

春かと勘違いした枝が
幾重にも伸びて 太陽を目指す

お前の季節は まだ先だ
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