バラナシにて ?/狸亭
 
一九八九年九月一日のガンジス河は
モンスーンの雨水を集め濁りに濁り
滔滔と流れて行く

ようやく白みかけた空から
朝の光が差し始めると
ガート(沐浴場)に群れ集う夥しい人々がどよめく

舳先を並べた粗末な大小の舟が犇めいて
白い人 黒い人 黄色い人
金髪 黒髪 茶髪 赤い服 青い服 白い服

色とりどりの観光客たちはインドの人々の圧倒的多数の中に埋没する
聖なる河は力強く盛り上がり濁り
世界の生命と死をのみこんで滔滔と流れて行く

手招きしている老船長の風貌に惹かれ
乗りこんだ小舟の漕ぎ手は
虎皮の褌一枚によく引き締まった褐色の体躯の少年だ

ガンジスの流れ
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