夏の神々/ひだかたけし
蝉の意識が意識の蝉が私の意識と意識の私と対峙し拮抗した
蝉意識は夏の大気と調和し薄くもわりと広がっていた
夏の大気までが微弱ながらも意識を此処まで発散していたのだ
私の意識はいや私自身が彼ら意識に浸蝕され呑み込まれそうになった
私はどうしたらいいのか
もはや逃げ出すにも肉体は硬直し切りウゴカナイ
ひたすら自己意識を強め眼をこじ開け凝視するしかなかった
そうしてそのミンミン蝉と夏の大気の意識と私の自己意識が臨界点を超えてごく自然に浸透し合い始める
赤紫の渦を巻く印象
ワタシハ・オマエノ・テキデハ・ナイ
ワタシハ・オマエノ・イチブ
オマエハ・ワタシノ・イチブ
渦巻く言葉響き浸透し合う意識渦巻き
赤紫に赤紫に
〇
気付くと僕はその場にしゃがみ込みミンミン蝉は居なくなっていた
只、木立の隙間のポッカリ開いた穴から青い青い夏の空が見えた。
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