金井雄二詩集『朝起きてぼくは』について/葉leaf
るし、金井の人生は日々新しく更新されていく。金井の「生活」は日々新しく領域を更新しているわけであり、そこに裏切りが生じるのは自然なことなのである。金井は「生活」を極めて誠実に生きている。彼の裏切りはその誠実さから必然的に生まれるものであって、そこに快さはあっても不快感はない。
私たちもまた金井と同様、日々新しく更新されていく「生活」を生き、日々新しい「生活」の領域と直面していく。金井の足取りは私たちの足取りと何ら変わらない。私たちは金井の詩を読むことで、「生活」の豊かさ、「生活」が日々更新されていくということ、そういったことを再確認するのではないだろうか。
詩は決して詩人固有の共有不可能な虚構だけではない。金井の詩のように共有可能な世界の構造を持つものも多数あるし、そういう詩であっても十分驚きに満ちている。それがある意味裏切りであるとしても、それは詩人が日々歩みを新たに生きていることの証左に他ならない。
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