嵐の予感/木屋 亞万
をぶっ壊す
死んだ人間の言葉は忘れられてしまう
のか
生まれてすぐ死ぬ
卵のまま巣から落とされる
なにものにもなれず
なにごともできず
なんの役にも立てなかったものたちを
これ以上虐げる必要があるだろうか
誰かの思う価値がなくても
誰かの思う役にたたなくても
誰かの思う利益にならなくても
生まれてきていいのだと思う
生きていていいのだと思う
ここに存在することを
誰かにとやかく言われる筋合いはない
蝉は同じような声を共鳴させて
うるさく合唱しているし
墓石は鉄板焼きができそうなほど熱い
やさしさのない風が吹いている
遠くに入道雲が立ち
その中で雷が巻き起こる
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