ブロンズ少女/為平 澪
いる)
どこにも帰れないブロンズ少女。傘もささずに固まったまま濡れている。
本当は赤いルビーの瞳で夕日が沈む一日を終えたかったかもしれない。
サファイアのような海を目指したかったかもしれない。ダイモンドが灰に
なるまで、誰かについて行きたかったかも、知れない。
けれど、
少女が一人、デクノボウ
突っ立ったまま固まって、動けないまま濡れている
駅前公園では若い女性議員が一人、車上からの立ち演説。
市民は同意、同意の、大賛成。激しい雨音の大拍手、の中で
呼吸ができないブロンズ少女。病院に行けない少女の胸から
赤い血がどんどん流れて青くなる。倒れてもどこの誰だか、
分からない。身元も不明、町の市民じゃないかもしれない。
だから、だから・・・/だから?
人々が望む「平和」と「幸福」が、高い位置から挨拶すると、
彼女だけを置き去りに「政策」だけが、歩いて行った。
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