祝福/岡部淳太郎
 
生まれて間もない赤ん坊が眠る部屋の
窓枠に一羽の鶫(つぐみ)がとまって鳴いている

ききききくわっくわっ

鳥の言葉を翻訳すればこうなる
――この家に新しい人が増えたよ
  次の世代の誕生だ

一羽の発見は他の数羽に伝わり
彼等は口々に言い合う

ききききくわっくわっ

いままさに継がれてゆくいのちのために
一羽の発見は鳥の一族へと伝わってゆく
やがて自らも渡ってゆく身の上なれば
鶫の発見は自らの身の上のものとして感受される

ききききくわっくわっ

冬から春へと変りつつある空の中
鶫は群れを成して飛び回る
その赤ん坊も
またその親でさえ気がついてはいないのだが
鶫たちは新しいいのちの門出に
祝福の舞を踊っていたのだ



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