ふたたびの夏/そらの珊瑚
万年筆の血液が乾いてしまったようだ
無理もない
数年うっかりと放っておいたのだから
いちにち、はとても長いくせに
すうねん、は
あっという間に感じるのはなぜだろう
風、が通り過ぎていく
透明な流動体が何も記さず
ただ通過してゆくだけなのに
なぜかその風を知っている気がしてふりかえる
あなたは誰ですか
万年筆のペン先を
ぬるま湯を入れたコップに挿しておく
止まった時間が解凍されて
命が巡りはじめるようにと
もしも花が咲いたなら
まさかひまわりとはいかないだろうが
万年筆ではなかったとあきらめて
土に埋めてしまえばいい
今年は蝉の声が少ないようだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)