ふたたびの夏/そらの珊瑚
 
万年筆の血液が乾いてしまったようだ
無理もない
数年うっかりと放っておいたのだから
いちにち、はとても長いくせに
すうねん、は
あっという間に感じるのはなぜだろう
風、が通り過ぎていく
透明な流動体が何も記さず
ただ通過してゆくだけなのに
なぜかその風を知っている気がしてふりかえる

あなたは誰ですか

万年筆のペン先を
ぬるま湯を入れたコップに挿しておく
止まった時間が解凍されて
命が巡りはじめるようにと
もしも花が咲いたなら
まさかひまわりとはいかないだろうが
万年筆ではなかったとあきらめて
土に埋めてしまえばいい


今年は蝉の声が少ないようだ
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