猫だった頃/梅昆布茶
 

流れに曝されて

変わってゆくのだもの


「猫でした」

猫でした
まちがいなくねこだったと思うのですが
定かではありません

幸せだったかもしれませんし
そうじゃあなかったかもしれません
宿無しだったのはたしかです

いまでもたいして変わりはしませんが
濡れそぼる夜はなくなったようです

また猫に戻りたいかときかれれば
まああれはあれで良かったかなと思うだけです

よく遠くのそらをながめていました
腹も減るものですが別の何かもさがしていたものです

からっぽの街で風の行方を追いかけては
光のあふれる季節をみつけようと彷徨いました

そう猫でした
いまでもその記憶が残っているのです



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