氷の記憶/由比良 倖
引き出しの奥のカメラに氷河期の白い記憶を閉じ込めたまま
唯一の命を抱えプラズマのウサギと共に言葉を泳ぐ
空っぽな夜にはひとに知られずに空へ静かな青を吐露する
(永劫)が送電線を流れてく一人称が星降る夜中
この世には存在しないイメージが廃墟になって続く裏庭
仮想的永遠が消え去ったとき生まれてしまう苦しい無音
家中のプラグを全部引き抜いて孤独に部屋を調律したい
暖かい日がモノクロに水飴のように傾きながら揺れてる
誰ひとりいない世界でひとり泣く仔猫のような嘘を吐きたい
目に滲みる滅んだ地球の上、午後、太陽フレアがぼ
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