またいつか解けるときのために/noman
 
少しの間視界が
滲んでいることに気づかなかった
時折聞こえる話し声が
体温より僅かに低いくらいの温度を感じ
させ それで少し
安心する
雲が降りてくる前に
何かを憶えておきたい
扉の軋む音や
郵便受けに詰まったチラシの匂い
とかそんな
ものでも

窓を伝う雨水を見ながら聞いた
作り話の中で
列車の運行は遅れていた
動いているものからできるだけ
遠く離れたかったが
長いこと待ち過ぎた
銀色の紙を燃やすのが合図
だったのかどうか
思い出すことはないだろう
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