想像という病/木屋 亞万
実際の風景よりもiPhoneで撮った画像の方がきれい
目の前の君よりもTwitterで数行ずつ切り取られた君の内面の方が好き
お肉をもぐもぐ食べる時より今夜の店のレビューを見てる時の方がおいしい
写真や絵や文章であらわされているものが
頭の中に掻き立てるもののほうが
とても魅力的に思えてしまう病のようなものに
十代の頃から
いやもっと前から蝕まれているのかもしれない
綻びや、とりとめのなさや、漠然とし過ぎている現実の
のんべんだらりとした具体物の集積よりも
ポリゴンみたいな断片的で抽象的なものを、
都合のいい想像でつなぎ合わせていく方が、幸せ
そうして
撮れたて写真より加工されたものの方が
周りの人間よりも遠くの映画の方が
新鮮な魚より缶詰の方が
よくなってしまって
生のものから
一次的なものから
鮮度の高い物から
遠ざかってしまって
周りの体験のすべての鮮度が落ちていく
当事者性が消えていく
そういう病に蝕まれている
しかし至って幸せである
毎日死にたいと思う以外は
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