THE COLD WAR/天才詩人
冷戦の冬。一級河川の、草の生えたサイクリングロード。顔のない少年だった僕は、真っ黒な制服を身につける、午後の。淡い光がこぼれる、窓。冬枯れの木立に囲まれる、L字形にゆがんだ路地の、埋め立てられた池のある公園で、野球をした。水溜りにグローブが落ち、長靴の足が、公園の敷地に近づく。ブロック塀に押しつけられる。頭を打つ。全身。金属。殴られる。僕は遠くにいきたい。遠くへ。とても 遠くへ。駄菓子屋の屋根に寝そべる少年たちが、夕焼けに染まる空を見上げているあの場所へ。1945年。ブロック塀が続く。苔が生えた路地の。貨物線路の照り返しが眩しい。透き通った空。青い。雲が浮いている。
記憶を白紙化された造成地
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