ある朝/遙洋
その日の朝はうすくかなしい匂いがしていた
すがすがしいの意味を考えていた
不安なような
もはや何もかもどうでもいいような
けれど水を飲まなければいけない気がして
うすぐらいキッチンで水を飲んだ
家を出て
点描された風景のなかを歩いて
みんなのところへ行く
かたちが散ってゆくまぎわの街の上に
千の青色がかさねられた空がおりてくる
いきすがら
外をごらんよ、と母に伝えたいと思った
けれども多分あまり意味がない
白い湖の真ん中で
みんなは舟に乗って待っていた
わたしはときおり濃淡がかわる灰青の点を
飛び石のようにふみすすみながら
舟へむかった
そしてもう一歩のところで
そとをごらんよ、という音が
反射する水面になって
まぶしくわたしをつつんだのだった
戻る 編 削 Point(2)