キャンサー、傘のひらかない街の蟹座/DFW
概念が消えたみたいな街で雨宿りする女の人
ただひたすら走るスーツの男たち
水溜まりを勢いよく蹴って歩く低学年の子
そのそばをわたしはうすく脱皮して横切る
祖父のキャンサー
雨のダンサー 、
雲にかくれた蟹座は
わたしの眼に産卵して
わたしのなかで雨が立ったり座ったりをする
傘のひらかない街に打ち鳴らされた
祖父のいびき
狭いはずのわたしの体の雨音は
わたしの運命をブクブクと宿しだす
ふくれた唇が
なにか伝えようとして
破裂しそうな果物みたいに
いまそれはみずみずしい
いっそ手放しでコギたいけど
それはちょっとムリ
蟹座がブクブクふいた泡にまみれた街並みが
顔面いっぱいに飛び散って
わたしはじめて生きてることを知ったから
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