入口・・/ただのみきや
々の囁きが暮らしの底
の焦げ付きから余熱を奪い静めてくれるだが深く踏み
出すことはしない今日は入口から見つめるだけだ覗き
見だから余計に誘惑されるのか妖精なんてものを想っ
てみた女狐に騙されたりパウチの踊りの輪に入ったり
だが実際に歓待してくれるのはやぶ蚊と虻とダニくら
いなもので蛇や蜥蜴だってよそ者からは離れ去る実際
この夏の細道は小さな嘘が気になりすぎて大きな嘘に
気が付かなかった誰かの夢をなぞるようにしてここま
でやって来たがサイドミラーにいつも冷やかな視線を
感じていた何週間も息を盗み和紙を千切るように燃え
ひとひらの蝶がわたしの死角を往きつ戻りつしている
《入口・・:2016年7月9日》
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