入口・・/ただのみきや
 
わたしの死角をひとひらの蝶が往きつ戻りつしていた
目の前に広がる森の少し分け入った辺り木漏れ日にあ
やされながら成熟した木々の裾に纏わるつややかな若
木の葉は森の外観とは対照的で光を透かして淡く発光
するあれは胡桃の若木だろうか視線が翅を下ろし静か
に呼吸を始めている青空と雲そして海に弾ける太陽も
爽快で心地よいがいささか眩しすぎていつの間にか瞑
目し脳裏の海原へと移行してしまう広がり過ぎた聴覚
の渦中に落ちて往くのは仕方のないことだろうしかし
こんな陰影と揺れる木漏れ日の迷宮は気ままに視線を
さまよわせ甘い夢に酔いしれるのにはもってこいの場
所だ街中とは違う鳥の囀りや樹々の
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