ねこの王さま/
TAT
その猫の名前はジョンといった
まるで犬のような珍しい名前で
彼を棄てた愛教大のハタチの青年が面白がって付けた名だが
ジョンとしてはその名が嫌いではなかったので生涯使い続けた
よちよち歩きの頃に追いかけた細いダメージジーンズの後ろ姿の追憶が朽ちてからも尚
ダメージジーンズと鎖の付いた財布を見かけるたび急いで前に廻って顔を確認するクセが抜けてからも尚
ジョンはジョンという名を棄てなかった
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