金魚草/?本 サハラ
 

たしかに揺らいだのは僕だった。
苔生したにおいのするドレスを
ひらひらと泳がせながら
貴女の側に寄ったのは僕だった。
びっしりと生えた鱗を剥がすみたいに
貴女の過去を一枚、一枚
解きほぐしては僕だった。
どこまで剥いても僕だった。

♯AIR
ほろほろになった銀色の雲は
いくら吸い込んだところで到底、
貴女の代わりにはならないので
僕は深呼吸をしながら僕であった。

♯鱗
鱗をすべて剥いだら柔らかい貴女の
肌がしっとりと濡れていて
僕はそこに手を触れるたびに
激痛を受けたような声で鳴く貴女を
貴女を貴女を。

♯エロティカ
剥がれたドレスをまるで貴女は金魚草のようだと言った。
私は下腹部から流れ出るものを抑えきれず、ただひらひらと鉢を泳ぐ。

♯金魚草
たしかに揺らいだのは僕だった。
吐き出した愛は熱すぎて貴女の身体を少しずつ
本当に少しずつ溶かしてゆくものだから。
僕は深呼吸をして、ただそこに僕で在った。
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