桃。/梓ゆい
父の死が
私の全てをひっくり返す。
独りぼっちだと悟る孤独感。
?いでいた手を
後ろに組んでしまった。
横に居た父のことを思い出さぬよう
ぽっけの中に両手を入れたまま迎えたつい昨日
父と一緒に食べたもぎ立ての桃の味と感触を思い出して
三十路を過ぎた身体が
喉が渇いた。腹が減った。と求めるので
片方の手を伸ばして
籠に盛られた大きな桃にかぶりついた。
じゅわっ・・・。じゅわっ・・・。と広がる
甘く懐かしい初夏の味。
どうだ?美味しいか??と
笑って問いかけた父の声がする。
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