柘榴の糸/しょだまさし
 
柘榴色の糸が見える
血管を彷彿させるそれは
右手の小指の先から
何処かへと伸びている

昨夜大仕事を終えて街へ行き
得た金で大盤振る舞いし
朝目覚めると
ホテルの豪華な一室の
床上に一人伏していた

赤黒い糸を辿りながら
歩き思い返す

結婚という言葉を出す度に
小金を出す女から
まとまった額を引き出させる
そのタイミングは心得ていた

糸は古寺へと続いていて
暗い雨雲の下
濡れる砂利道を進むと
墓場に出た

無縁仏と書かれた
朽ちかけた看板の
先に苔むして建つ
墓々のそのまた奥の暗がりに
糸はつながっているのだった
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