そして落葉樹は/もっぷ
纏いはじめ、風がそれを絃として奏でる陽気の戻りつつある未明、季節の変わり目にしてはよく晴れて、月も輝きながら静かに歌っていた。
「いつの時代にもその時代の道具であるいは方法で、昔ながらのやり方で人間は命を捨てようとする」
風の歌だが、少し冷え込む晩でもあった。
「そういう人間たちの日日の様子を見てきたから、一概に、馬鹿な真似を、とは言えない。それでも、ぼくはそういう真似をしてほしくはない」
月も同意の光りを強く投げかける。
落葉樹は、少しの沈黙のあとにちいさく言った。
「ぼくの枝の一本で遠い冬に首を吊った人間が居ました。なすすべもなく見ていました」
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