そして落葉樹は/もっぷ
 
生か。そんなこどもがなぜこんな時間に……。
 樹も風もそして空のなかの月までもが一瞬同じ沈黙を知った。葉の落ちたあとの樹の、凪いでくつろいでいる風の、遠い遠いところに居る月の三者ともが(たとえて)目を見合わせる。
「この十二月にあたしは命日を二つ抱えているの。とてもさびしくて」
 少女はどこへともなく言葉を置いた。
「……十二年後のあたしがいま、街のビルの一室の孤独のなかで泣いているの」
 樹も風もそして月も孤独には詳しかった。だからこそ未明に、いつからかこういう静寂の世界での、知られざるちいさな会が持たれるようにもなっていたのだ。
「二十四年後のあたしはいま、練炭を持ってそして玄関の
[次のページ]
戻る   Point(3)