八柳李花『Clich?』について/kaz.
 
論文のような体裁をなした横書きの詩集。サリンジャーのことも書かれている。しかし文体的な影響関係はないようだ。強いて言うならこの詩の流れるような連続性というやつが、サリンジャー的なものの影響とみることができるだろう。世界に対してあくまでクソったれなものという態度を取り続ける姿勢は、サリンジャーのホールデンそのものかもしれない。
私にとって奇異に映るのは、彼女が留学を諦め就職することにした経緯などが、この詩集にはほとんど反映されていないということである。それは世界に対する憎しみ、例えば「音楽への憎しみ」として現れてはいる。確かに日本はスーパーに行けばすぐに音楽に出会うことができるし、そういう意味では
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