川辺にて(三篇からなる オムニバス)/るるりら
 
の一滴は
極悪人がおのれの醜さに 
身を焦がして蒸散した涙の一滴だった

いずれにしろ
はるかかなた海の向こうの出来事は
膵石ラジオでキャッチされ 諸島のすみずみまで伝えられる
この島の人々は 不安になると 情報ばかりに囚われはじめる
みあげれば スコールの上にも 太陽の行路は或るというのに


【普通の川】

光を抱いたまま
ありうべからざる青をひるがえし
一羽の翡翠が 空間を切るように鳴いた
わたしのくちびるに浮かぶ雲をも 裂くような声だった

きのうまでの 日常が思い出せない
とつぜん 光のただなかに 私は居て
うつくしき律動の川辺に
ひとつの ぼく
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