緑の繁栄/千波 一也
 


緑の繁栄を聴いている
ただ、ただ、
聴いている

ひとに
負担をかけないような
当たり障りない言葉たち
ひとの
望みを絶たないように
むやみに明るい言葉たち

緑の繁栄が目になじんでくる
知らず、知らず、
なじんでくる

ひとに
ふるまう笑顔のうらには
どんな涙があるのだろう
ひとを
温めようとする腕のなかには
いくつの痛みがあったのだろう

わかりやすい総てには名前があって
総てきちんと知られていて
そうではない総ては
危険とみなされて
不要とみなされて
不正解とみなされる

緑の繁栄に囲まれている
いつからか、いつまでか、
すっかり囲まれている

もともとの
可憐な形は忘れ去られて
まるで知らない
強固な形が
緑を支える

支える形は変わっても
緑は緑にちがいない、と
ますます緑は
繁栄する








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