滑稽な毎日/あおい満月
 

私がいくら注意をしても、
見えないんだからいいの、
私にはこれが表なの。
といってきかない。

あなたは風呂にも、
真っ暗なまま入浴する。
いいの、
私にはみえるんだから。
の一点張り。
可愛いようにも見えるが、
どこかいつもはりつめている。
それはきっと、
目のみえない人間の気持ちは
誰にもわからない、
ならば、滑稽な道化のまま、
人生を貫いてやろうとする、
あなただけの決意にも見える。

仕事のない土曜日の朝、
あなたに目玉焼きを作る。
弱めの中火の火加減で、
大好きな半熟卵をつくる。
きつね色のトーストと珈琲を添えて。

(お母さん、できたよ)

そう呼ぶとあなたはあの猫の笑顔になって、

ありがとう、おいしい。
そういっていつまでも、
目玉焼きを頬張っている。

他の誰かからみたら、
滑稽な毎日かもしれないけれど。


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