「そしていま、最後の曲が消えた」/ホロウ・シカエルボク
 
だから
音楽越しに聞こえていた雨の音がやんだ、それは非常に興味深い現象だぜ、なんたって本当にやんでいるのかどうか判らないんだ―このヘッドホンを外してみるまではね
でも俺は外さないんだ、そんなこといまはどうでもいいことだから
いまの俺にとって雨が降っているかどうかなんてことはどうだっていいことなんだ、必要のないことなのさ、屋根に穴でも開いているならまた別の話だけどね
ウダウダと話す癖のないやつは、いつまで経っても同じ言葉だけを繰り返す、まるでテープレコーダーに録音されたものをオートリバースで再生し続けるようにね
俺は些細な旋律を繰り返し読みながら、沈殿と沈黙を繰り返し、本当に押し黙るときの準備をする、それはどんなものにも必ずやって来る瞬間だ、そのあとで俺の記録したものたちはどこかで息づいてくれるだろうか?まあ、死んだ後のことなんてどうだってかまわないって言っちまえばそれまでだけどね
俺は音楽を流しながら詩を書く、そうしておけばうんざりするほど長いお喋りになりそうでもこう書くだけで終わることが出来るんだ、魔法の言葉さ…



「そしていま、最後の曲が消えた」



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