梅雨の林檎/
山部 佳
受け取ったナイフで
少女は林檎を割った
夕べ、僕が刺し殺し
眠い目を擦りながら
それが起き上がりはしないかと
見張っていたんだ
部屋の隅で
分かるかな、この感じ
血のついたナイフの可笑しさ
爽やかな気分もしたし
そうでないと思えば
途端に空は厚い雲に覆われた
透明な鏡の水面
妖精の住む湖
楕円の皿に盛られた
林檎の破片が笑っている
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