ヘビトンボ/ただのみきや
 

どれほど孤独でも
空っぽに
殻になるまでは
月の光を浴びて
涼やかな夜気を扇いでいたい
樹々の甘い吐息
闇に流れる愛の歌
ああ美しき生命
美しい――
あれは
誰だ?
月空に寝そべって
微笑んでいる
精をささげた あの……

違う
腕が
あれは


  {引用=《女郎蜘蛛》

  よくきてくれました
  こんな女郎の宿へ
  あたしはこの楡の枝に住む者
  ヘビの旦那とはお隣さんなのさ
  暴れてもとれはしませんよ
  あたしの褥はね
  どんな翅の方も虜にするんです
  ヘビの旦那が
  「ヘビトンボなんて奴は
  いちど胃袋に落ち
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