水無月/あおい満月
う。
そこには、私の失われた皮膚がある。
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生まれてくるものと、
これから失われていくものとが、
混在した身体をかじりながら、
あるいている。
生まれてくるものと、
失われていくもの。
どうしたって、
失われていくもののほうが多いのに、
私はなりたての母親になって、
生まれてくる、
失われていくものを愛でる。
失われていくものが成長して、
私の頭にかじりつく。
私は過去に食い荒らされる。
花が落ちている。
花を掬い上げても、
手のひらに溶けていく。
手のひらと花の間に映るものは、
刹那に過ぎていった、
おびただしいほどの足跡。
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