神秘/ひだかたけし
 
街道をふらふら歩き進み歩道沿い、
赤い赤い花の群れ渦
の中に
黒い革靴一つ、落ちている
右片方だけ 色褪せ 皺の寄り
黒い革靴、落ちて在る。

存在の大海原に
今日も冷雨は降り続け
個体化された在る
の唐突異様な出現
に驚きながら
生々しい実在感
秘やかに神
の気配感じ観じ
その束の間の稲妻に、
未だ生かされ活かされ在る己。

 
戻る   Point(3)