窓/kaz.
 
の中に、)
向こうから、夜景の消えていく音がする。それは街路樹の群れをこえ、信号機の点滅をこえて、やがてわたしの鼓膜をこえて、中へと入ってくる。代わりに色彩が少しずつ短くなって部屋から抜けていく。

彼女は歯をわたしに向ける。日差しはそこかしこに散らばって、ぎらぎらと滾っている。彼女はわたしの物語のせいで、歯まで真っ黒だ。夜が更ける頃に、わたしはつめたくなった背中を探して、部屋中に広がるだろう。だから、また布をかけて、向こうからくるひかりを閉ざすことにした。
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