心の家/もっぷ
あの娘(こ)は女の子 なのに
選べなかった積み木で建てた家には
花を飾る場所がない
わたしが贈りたいのは
やわらかな色のラナンキュラスの束なのに
どうしたらいいのかわからない
だから わたしはおんなだけど
大工仕事の準備をして
女の子の家を訪れた
それなのに居留守されて
わかってるのに知らん顔されて 仕方もなく
ラナンキュラスの束だけを
門の前に置いて 立ち去った
もちろんすぐのとこの
電柱のかげから覗いてるけど
三日たって一週間たって とうとう一年たって
干からびてしまった
乾物のわたしはゆらゆらふらふら
その日の風次第で どこへでもゆける身の上
それで紐を拾ってきて
自分を電柱に縛りつけて
ラナンキュラスの束の心配をしながら
あの娘が心をゆるすのを
ただじっと 待っているわけです
戻る 編 削 Point(8)