いまはそこから立ち去っていくだけの/ホロウ・シカエルボク
くらい森の中、葉からこぼれたひと滴が百の詩篇になりながら堆積した過去を濡らすとき、僕は口を開くことはない―瞬間の眩しさに射貫かれて心を停止している、汗に濡れ、歩き続けて疲弊した身体を抱えて―落ちて砕けた滴は霧散していくつもの命のきっかけになる、名もない植物たちや名もない生物たちがその一滴を待ち続けている、名もない…僕は。いつか高名な学者が言ったある言葉を思い出す、「名もない花というものはない。名も知らぬ花と言いなさい」素敵な言葉だ、信じるに値する言葉だ、でもそれは違うのだ、やはり―音楽が音符から始まったものではないように、花もまた名から始まったものではない、見つからぬ花は、やはり名もな
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