四十三音/サダアイカ (aika)
の声がくりかえされる中
ぺんを持つ指が熱く硬くなって
便せんが足りなくなりそうで
書いた文字がぎっしりぎっしりとつまり
恋人の呼ぶ並べられた二文字で
私は手遅れだとあきらめはじめているのに
音の雨をすくいとるように
私はどうすることも
できなくなっているのに
二文字を書きとるぺん
止めるわけにもいかなくて
恋人の声に両耳をふさぐことできなくて
恋人の声が発する二文字が
愛しているでいっぱいに
いっぱいになってゆく
恋人が私の恋人が
人の声がする
恋人は私ではない
もう二文字を書きとる意味などないのに
散らばった便せん私は
どんどん沈んでゆく
私は四十五音の中に生きたかっただけなのに
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