苦い匂い/あおい満月
強烈な匂いと苦味に、
舌が痺れた。
あなたの匂いを思い出した。
酸っぱかったあの身体。
精液が苦かった煙草の息。
初夏だった。
薔薇の咲き乱れる公園に一人いた。
夏の囁きが映る。
陽炎揺れる遥か向こうから、
人影が揺れる。
見覚えがあった。
あの体つき。
ロープをずるようなあの足音。
呼ぶ声は風にとけて、
薔薇がちった。
私の肩に血が滲む。
私を抱きしめるその腕は、
獣のように力強くて、
ほのかにやさしかった。
咲き乱れる花を殺した。
花は静かに眠りに堕ちた。
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