夜のたより/木立 悟
ずっとずっと
灰を感じていました
くりかえしくりかえし
乾いては潤う
水を含んだ灰が
目と背に降るのを
感じていました
何も無いところから
火は火に手わたされ
細長い想いを燃してゆく
無をすぎる無の影が
地平から地平へと
長く長くつづいてゆく
駆け昇るものは見えず
駆け降りるものだけが曇を運ぶ
立ち尽くすのは鏡
暗がりを映す
黒い背の
鏡
鏡へ鏡へ飛び去る曇から
風はつづき かがやき止まない
紅はすぐに黒くなり
曇は羽になるばかり
羽は風になるばかり
ちぎれちぎれ 鳴くばかり
海が見える丘
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