冬景/あやさめ
振り返る
目を閉じて歩くしかないくらい風が強すぎて
うっすら伸びた影は六方向に行進するふりを始める
時々周りの人が隠された摩擦のない板に足を取られて
声を上げることなくひっくり返る
だれも気にしないようにいつか同じようになることを忘れて
うつむいて流れていくので
ガラス板の色をした空気が遮断する波の音を探して
彼の視線だけが 遠くへ行くのだ
黙ってそこに立ち尽くしてみても音は全て
あの毛玉のような白に吸い込まれてしまうか
気がつかないくらいの速さでここを通り過ぎた
何本もの回送列車にかき消され
足跡も勝手に塗りつぶされて道を作りきれなかった
彼らの意識だけが 遠くへ行くのだ
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