凍結/本田憲嵩
 
ハラリ
腰までながい黒い頭髪
ぼくの初恋の少年の恥じらいを取り戻させるもの


――垣間見える
年上だったあの女(ひと)の面影


フワリ
仄かなリンスの香り
お澄ましのお姉さんの声
透明なマニキュアを塗った光る爪
不意に
ぼくの小さな手を
ギュッと握りしめてくれた
そのやわらかくて
仄かに冷たいしろい手 しろい指


今となっては
花びら舞うような やさしい思い出


トクン
ぼくの小さかった身体
いきなり
固くギュッと抱きしめられた
静まりかえった空間
鳴りひびく
あの女(ひと)の息づかい
白いブラウスごしから
胸の呼吸のうねり
ふと不安に捉われながらも
そんなあの女(ひと)の鼓動だけが響きわたる世界
その温かさ


――ずっと凍結


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