黒魔術(改)/本田憲嵩
 
メロウなサックス 黒いランジェリーの黒魔術
交錯するグラスの水晶の煌めき じっとりと焼
き爛れてゆく黒い蛇の腰つき そのすこし萎び
た手の冷やかさ 垣間見える策士の法令線 狡
猾な蛇の舌と舌 淑女は憂いがちに幸福のため
息を漏らし その自らの甘さに蕩けそうになる
やがて辿りつく脚の海岸 黒い花々の施された
レースの襞の波 まばゆい砂浜の腿 その波打
ち際で少年のように戯れる下僕 その皮膚を幾
重にも焼いていく熱風 その潮騒のようなリズ
ム うつ伏せに寝そべりながら 静かに打ち寄
せられてゆく もはや焼け爛れる岩礁の人 そ
れを鳥瞰するかのような 切れ長の妖艶なまな
ざし そのながい睫毛の黒い計略 落ちて砕け
るグラス くらくらと贋の光による眩暈の陶酔
寧ろ悦びつつ その昏さに沈みこんでゆく――
段々と彼女はしなやかな黒豹へと変化してゆく


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