どこにもいない人/ふるる
 
 が
どこにもいない人は      散ってゆく
どこにもいかない
               ひぐらし
季節はめぐりゆき      雨のようにヴェールのように
立っている影だけが動き    影を包み

ほそいほそい道を
編んでいる人        わたしたちは
首を傾けながら        どこにもいない人
その道に            どこにもいなかった人
夕日を浴びる            けれど
黒い影                手を振る あなたたちへ
どこにもいなかった人の         手を振っていいだろうか
残像が                愛しい
裏側にあらわれて          きれいだと
懐かしさにあふれ           感じて
誰かの愛しい記憶            しまう
その
記憶もまた            それだけ
どこにもいない人          それだけのこと
どこにもいなかった人のもの      なのだ

                      けれども


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