どこにもいない人/ふるる
 
どこにもいない人
どこにもいなかった人の
残像
ひぐらしうずまくその中で
黒い影が夕日を浴びる

ですらない
どこにもいない人
行く場もなく
たった一人の夢の中
残像は生活し
水を飲み
眠り

きれいだ
と感じてしまう
眠るきみの
うす青いまぶた
指でなぞれば
感じるのに
これは誰かの残していった
誰かの愛しい記憶
どこにもいない人
どこにもいなかった人が
水を飲みほし            ささやく耳元
発する             誰かの身体に向けて
花が散る           どこにもいない人の
星も散ってゆき       言葉 が
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