百年の恋も…/イナエ
 
手など
近頃 じっと見たこと無いが
今朝 背伸びをしようと
上げた手を見てしまった

よじれた皮膚の連なり
幾重にもかさなった山脈のようで
これがわしの手かね

柔肌を撫でた歴史など
微塵も見られない
かつて
祖父と一緒に
棺に入れた手ではないか

 権力を財力を掴み損ねて
 垂れ下がった指
 皺の谷から立ち上る悪臭
 
孫よ
 この手に抱かれる前に
 逃げよ

としても
私を支え 忠実に仕えて
家族を育て守って
老いた手

今なお生に執着する
艶やかな皺よ

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