夜明け前、記憶の中で明日を/ホロウ・シカエルボク
枯れてしまった花々が横たわる道端で
明日来るバスを待っている
夕方まで降り続いた雨のせいで
街は水のにおいがする
ターミナルのベンチはわたし一人
これ以上誰もやって来ることはない
飲み干したミネラル・ウォーターのボトルに火をつけて
灰皿の上で天に還す
わたしたちの言う天国のようなものが
かれらにあるのかは判らないけれど
つまりわたしは退屈していたのだ
ペーパー・バックを開くには蛍光灯は暗すぎた
これ以上目を悪くしたくなくて
遠い昔、子供のころ
両親と弟と一緒に
こうして朝一番のバスを待っていたことがある
もう名前も忘れてしまったふるさとの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)