悲しみ/
ベンジャミン
ていないことに気づいても
それは少しおかしいだけで
悲しみは
欠けた茶碗の
見当たらない欠片のようで
ビールの空き缶の
ひしゃげた格好のようで
でも
ただ在る光景は
見たいように見ているだけで
冷たい水に手を浸し
数えることもなく皿を洗い
感覚もなくなってしまったはずの
指
その
薬指が
少し軽く感じられる
錯覚のような
曖昧さに
似ています
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