みどり うたかた ?/木立 悟
 





空を歩く音
屋根を歩く音
鏡に残る
ひとりの光


夜の蓋を投げ捨て
ふたたび拾い
わずかに溜まった雨をすする
冬しか居ない水紋を


夕方に飛び 夕方に降り
気付けば棘にまみれている
すぐに消える
舌の上の火にまみれている


花を埋めようとする花に
風が櫛のように吹き
音は染まり 傷に延び
降りそそぎ散り急ぎ降りそそぐ


まとわりつく正しさは
常に炎と膿を流し
治らない傷への径を
宙に涙に漂わせている


緑を金に
金を緑に咀嚼する顎
牙と刃が上下する洞から
羽を持つ四つ足のうたは聞こえくる


凍らぬ池の水面に
巨大な横顔が現われては消え
音は空へ還り
青は青に沈む


曇の鉛を
灰の毛糸が流している
花を口からこぼしながら
午後は鏡をすぎてゆく




















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